Agency Payment Compliance
広告代理店と下請法・取適法
外注先への支払いは何日以内?
広告代理店が制作会社、デザイナー、ライター、動画編集者などへ業務を委託する場合、取引内容や資本金基準又は従業員基準によっては旧下請法、現在の取適法の対象となることがあります。 支払いサイトの考え方と、外注先へ早く支払うための資金繰り設計を整理します。
最終更新日:
3-Second Summary
この記事の結論を、まず3つの数字で
細かい条文や用語の前に、広告代理店の発注担当者・経理担当者が押さえるべき数字はこの3つです。
60日
支払期日の上限
10-30日
推奨サイト
2026/1
取適法スタート
目次
目次
まず押さえるべきこと
旧下請法は、2026年1月1日から取適法(中小受託取引適正化法)として運用されています。 広告代理店が外部パートナーに制作や役務を委託する場合、対象取引では発注条件の明示、支払期日の設定、取引記録の保存などが求められます。 支払期日は、給付を受領した日または役務提供日から60日以内で、できる限り短い期間内に定めることが基本です。
本記事は一般的な実務整理であり、個別取引の法的判断は契約内容、資本金・従業員数、実際の取引態様により異なります。
Stakeholders
登場人物と「お金が動く順番」を整理する
代理店の支払いサイト問題は、3者の関係を図にすると一気に見えやすくなります。 「クライアントから入金される前に、外注先に支払う必要がある」という時間差が、すべての出発点です。
Client
クライアントクライアント(広告主)
AgencyAgency (You)
広告代理店
SubconSubcontractor
外注先外注先・制作パートナー
入金:クライアント →(30〜60日後)→ 代理店
支払:代理店 →(60日以内・短いほど良い)→ 外注先
ギャップ:先に外注先支払い、後からクライアント入金。この立替を誰が吸収するかが論点。
Scope
広告代理店の外注で対象になりやすい業務
広告代理店がクライアントから受託した業務の一部を外部へ再委託する場合、情報成果物の作成や役務提供の委託として整理されることがあります。 代表的には、次のような業務です。
Legal Relationship
広告代理店が「委託事業者」、外注先が「中小受託事業者」になる関係
取適法では、単に「発注側」「外注先」と呼ぶだけでなく、発注する側を委託事業者、受注する側を中小受託事業者として整理します。 広告代理店がクライアントから受けた制作・運用・開発業務の一部を外部へ委託する場面では、この関係に当たるかを取引ごとに確認します。
委託事業者
広告代理店・制作会社などの発注側
クライアントから受託した業務について、仕様・納期・報酬などを指定して外部パートナーへ委託する側です。 対象取引では、発注内容の明示、支払期日の設定、支払遅延・減額・不当なやり直しの禁止などを守る立場になります。
中小受託事業者
制作会社・クリエイターなどの受注側
広告代理店から制作物の作成や役務提供を受ける側です。 法人だけでなく個人事業者も含まれ得るため、デザイナー、ライター、動画編集者、開発者へ発注する場合も確認対象になります。
Capital / Employees
資本金基準又は従業員基準のどちらかで見る
取適法の対象になるかは、取引内容に加えて、委託事業者と中小受託事業者の規模差で決まります。 資本金基準に当たるかを確認し、資本金基準で拾えない場合でも、常時使用する従業員数の基準に当たると対象になることがあります。
広告クリエイティブ・記事・動画など
情報成果物作成委託・役務提供委託(プログラム作成、運送、倉庫保管、情報処理を除く)
資本金基準 1
委託事業者
資本金5,000万円超
対象になる受注側受注側
中小受託事業者
資本金5,000万円以下
または個人
資本金基準 2
委託事業者
資本金1,000万円超5,000万円以下
対象になる受注側受注側
中小受託事業者
資本金1,000万円以下
または個人
従業員基準
委託事業者
常時使用する従業員100人超
対象になる受注側受注側
中小受託事業者
100人以下
または個人
システム・アプリ・計測実装など
プログラム作成、情報処理を含む情報成果物作成委託・役務提供委託など
資本金基準 1
委託事業者
資本金3億円超
対象になる受注側受注側
中小受託事業者
資本金3億円以下
または個人
資本金基準 2
委託事業者
資本金1,000万円超3億円以下
対象になる受注側受注側
中小受託事業者
資本金1,000万円以下
または個人
従業員基準
委託事業者
常時使用する従業員300人超
対象になる受注側受注側
中小受託事業者
300人以下
または個人
実務上の注意:広告制作の外注でも、デザイン・動画・コピーと、プログラム作成・情報処理では基準が変わることがあります。 同じ外注先でも案件内容ごとに取引類型を確認し、資本金と常時使用する従業員数を分けて管理しておくと判断しやすくなります。
Decision Tree
うちの外注は対象になる?3つのYes/Noで見当をつける
最終判断は契約内容、取引類型、資本金・従業員数による個別判断ですが、まずはこの3問でアタリをつけられます。 3つ全部「YES」なら、取適法の論点が出てくる可能性が高い取引です。
クライアントから受託した業務の一部を、外部に再委託していますか?
(例:受託したLP制作を、外部の制作会社・デザイナーに発注している)
完全に自社内で完結する取引は、本記事の論点からは外れます。
委託先は、自社より小さい事業者(または個人)ですか?
(資本金区分や規模差で、取適法の保護対象になりやすい関係性)
資本金区分が逆転している場合、取適法の典型的な対象関係ではない可能性があります。
委託内容は、制作物の作成 or 役務の提供ですか?
(Webサイト、バナー、動画、ライティング、運用代行、撮影など)
純粋な物品売買・媒体枠の買い付けだけの場合は別の整理になります。
3問とも YES なら:支払いサイト60日以内、書面発注、減額・やり直し禁止などの実務(次のセクション)を確認しましょう。 判断が難しい取引は、弁護士・公正取引委員会・中小企業庁の窓口に確認してください。
Duties
発注側が特に確認したい3つの実務
発注内容を書面または電磁的記録で明確にする
業務内容、報酬額、納期、支払期日、支払方法などを発注時に明確にします。口頭発注や後追いの条件確定は、トラブルの原因になります。
支払期日を60日以内で、できる限り短く定める
対象取引では、給付を受領した日または役務提供日から60日以内に支払期日を定めることが基本です。締め日ではなく起算日を確認します。
取引記録を保存し、支払い状況を追えるようにする
発注書、請求書、検収記録、支払い記録を案件別に整理します。制作進行と経理が同じ前提で確認できる状態が重要です。
Payment Site
支払いサイトは「締め日」ではなく「受領日・役務提供日」から見る
広告業界では、月末締め翌月末払い、月末締め翌々月払いなどの支払い条件が残っていることがあります。 しかし対象取引では、商習慣ではなく、実際の給付受領日または役務提供日から60日以内かどうかを確認することが重要です。
月末締め翌々月払いは、起算日によって60日を超えることがあります
たとえば月初に役務提供が完了しているのに、月末締め翌々月末払いにすると、実質的な支払いまでの期間が長くなります。 取引先との信頼関係を守るためにも、案件ごとに検収日、役務提供日、請求日、支払日を分けて管理するのが現実的です。
Timeline Diagram
受領日からの「日数」で見る支払いサイトの色分け
受領Day 30
理想Day 60
上限
推奨ゾーン
外注先の資金繰りを守れる範囲。10〜30日サイトで設計すると、選ばれる代理店になります。
上限内だが要圧縮
法令の上限内ですが、「できる限り短く」が原則。商習慣で60日を埋めるのは推奨されません。
アウト
対象取引で60日を超える設定は、支払い遅延のリスク。商習慣ではなく日数で確認します。
注意: 「月末締め」だけで安全とは判断できません。支払期日が受領日・役務提供日から何日後になるかを案件ごとに確認します。
Worked Examples
同じ「月末締め」でも、実日数はこれだけ違う
例:すべて4月1日に役務提供が完了したケースで比較。
| 支払い条件 | 役務日 | 支払日 | 実日数 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 当月末締め・翌月15日払い | 4/1 | 5/15 | 44日 | OK |
| 当月末締め・翌月末払い | 4/1 | 5/31 | 60日 | ぎり |
| 当月末締め・翌々月10日払い | 4/1 | 6/10 | 70日 | NG |
| 当月末締め・翌々月末払い | 4/1 | 6/30 | 90日 | NG |
読み方:「翌月末払い」と聞くと安全に思えますが、月初に役務提供を受けていると60日きっかり。さらに「翌々月」だと普通に60日を超えます。 案件ごとに受領日 → 支払日の実日数を見るのが鉄則です。
Risk Check
広告代理店で起きやすい禁止行為の例
支払い遅延だけでなく、発注後の一方的な条件変更や無償修正の依頼も注意点です。 現場判断で進めた対応が、外注先に不当な負担をかけることがあります。
発注時に決めた支払期日(60日以内)で確実に支払う
支払期日を過ぎても代金を支払わない
仕様変更時は再見積もりを取り、書面で合意し直す
発注時に決めた金額を、正当な理由なく減額する
代理店都合のリテイクは追加発注・追加報酬で対応する
外注先に責任がない修正ややり直しを、無償で求める
費用負担を求める場合は、合理的な理由と金額を契約で明示する
協賛金・手数料・利用料などの名目で、不当な負担を求める
納期・仕様・金額の変更は、両者合意の書面で記録する
発注後に一方的な条件変更(納期短縮・仕様追加など)を行う
Cash Flow Design
外注先には10日から30日サイトで支払い、自社の資金繰りは平準化する
外注先への支払いサイトを短くすると、制作パートナーとの関係は強くなります。 一方で、広告代理店側はクライアント入金が後ろに来るため、案件が増えるほど先行支払いの負担が重くなります。
ADGrowを活用すると、外注先・制作パートナーには10日から30日程度の短いサイトで支払いながら、自社側のキャッシュアウトを調整する設計が可能です。 「取引先に早く払う」と「自社の手元資金を守る」を両立しやすくなります。
ADGrowが合うケース
Flow Diagram
ADGrowを介した支払いの流れ
広告代理店が外注先へ発注
制作内容、金額、支払期日を発注時に明確化します。
ADGrow経由で外注先へ早期支払い
外注先には10日から30日程度の短いサイトで支払える体制を作ります。
代理店側は入金サイクルに合わせて精算
クライアント入金前のキャッシュアウトを平準化しやすくします。
Checklist
支払いサイト短縮の前に確認すること
外注先ごとの支払条件
支払日、締め日、検収日、請求書受領日を分けて管理します。
クライアントからの入金予定
広告主からの入金日と、外注費の支払日がどれだけズレるかを確認します。
案件別の粗利と原価
早払いしても採算が残る案件か、原価と入金予定をセットで見ます。
発注書・請求書・証憑の管理
法務・経理・制作進行が同じ情報を見られる状態にします。
FAQ
よくある質問
広告代理店の外注は下請法・取適法の対象になりますか?
広告代理店がクライアントから受託した広告制作、Web制作、デザイン、動画編集、コピーライティングなどを外部の制作会社やクリエイターへ再委託する場合、発注側の広告代理店が委託事業者、受注側が中小受託事業者となり、取引内容と資本金基準又は従業員基準によっては取適法の対象となることがあります。
広告代理店が制作会社に発注する場合、支払いサイトは何日以内ですか?
取適法の対象取引では、給付を受領した日、または役務の提供を受けた日から60日以内で、かつできる限り短い期間内に支払期日を定める必要があります。実際の適用関係は取引内容や契約条件によって確認が必要です。
月末締め翌々月払いは下請法・取適法上問題になりますか?
検収日や役務提供日から起算して60日を超える支払期日になる場合、対象取引では支払い遅延のリスクがあります。月末締め翌々月払いなどの商習慣だけで判断せず、受領日または役務提供日からの期間で確認することが重要です。
広告枠の買い付けだけでも下請法・取適法の対象になりますか?
広告枠の買い付けのみなど純粋な媒体取引は、制作物や役務の委託とは扱いが異なる場合があります。ただし、実態によっては別の法令や優越的地位の濫用の論点が生じることもあるため、契約と実態の両方を確認する必要があります。
外注先への支払いを10日から30日サイトに短縮するにはどうすればよいですか?
外注先への支払日、クライアントからの入金日、案件別の原価を整理し、先に支払う資金負担をどう吸収するかを設計します。ADGrowのような外部決済を活用すると、外注先には短いサイトで支払いながら、自社側のキャッシュフローを平準化しやすくなります。
参照した公的情報
本記事では、取適法と広告業界の取引適正化に関する公的情報を参照しています。 最新の制度内容や個別判断は、各機関の公式情報を確認してください。